カバーソング温故知新

ゆかりっく Advent Calendar 2022」24日目のエントリへようこそ。

昨日の記事は こま さんの「わたしのゆかりんのかきかた!」でした。
絵心というものが欠落したまま生きている私にとっては、ただただ感嘆することしかできない内容でしたが、イラスト化することでゆかりさんのいろんな変化を捉えられているのも素敵だな、と思っておりました。是非ご一読を。

はじめに

昨年と同様、#ゆかりんアドカレ のクリスマスイヴ担当となりました しらさぎ と申します。自己紹介は昨年の記事の冒頭で記した内容から大きく変わっていないのですが、一つ付け加えるとすれば「YOKOHAMA AIR CABINに桜木町駅から乗ったのは赤レンガ倉庫に用があったからではない」、ということぐらいでしょうか…

とある横浜開催のライヴ参加前に乗ったYOKOHAMA AIR CABINから見た風景

さて、2022年の田村ゆかりさんの音楽活動としては自身初となるアコースティックツアー *Soundrops* と、4年振りの単発アリーナライヴ *Meat Me?* の開催がありましたが、この二つに共通するのが「どちらもカバー曲を含むセットリストであった」ことでした。

個人的な話ですが、ゆかりさんに年齢が近しく幼少期よりテレビやラジオの歌番組を楽しんできた自分にとって耳馴染みや思い出のある曲が選ばれることもあり、そういった歌曲に「ゆかりさん(またはライヴ中に出演しているゆかりさんに似た誰某か)による歌唱」という効果が重なって一際感慨深くなったりするのですが、他の王国民の方々にとってはゆかりさんの歌唱が初めての出会いになる場合もあるのだよなぁ…とふと思い至りました。

そこで今回は、以下の条件に当てはまるカバー曲について、昔話を交えながらご紹介してみたいと思います。

  • 田村ゆかり LOVE♡LIVE」という冠が付くようになった2008年以降に開催され、且つファンクラブ会員へのチケット先行販売が実施されたライヴ公演で披露されている
  • カバー元の楽曲が2000年12月31日以前(20世紀)にリリースされている

ということで、お品書きはこちらです。

「お約束」コンビネーション

『ゆかりさんが歌唱したカバー曲』という括りで振り返った時に外すことが出来ないのは、お誕生日時期に開催されるライヴで2公演に渡るセット披露される『センチメンタル・ジャーニー』と『17才』ではないでしょうか。この組み合わせはこれまでに三度登場しています。

  1. 2009年2月22日(愛知公演) → 2月27日(札幌公演) *Dreamy Maple Crown*
  2. 2018年2月25日2月27日 *Tricolore Plaisir*
  3. 2019年2月26日2月27日 バースデーイベント2019

「♪伊代はまだ 16だから」というフレーズがあるがために、繰り返しやって来る「17歳の誕生日」を目前に控えた公演で歌唱されがちな『センチメンタル・ジャーニー』は、その歌詞に名前のある松本伊代さんのデビュー曲。リリースされた1981年、彼女は当に16才。実年齢を歌詞に織り込むという奇策は当時の時点でベテラン作詞家であった湯川れい子さんによるものでした。

一方の『17才』。原点を辿ると「センチメンタル・ジャーニー」から更に10年遡る1971年にリリースされた南沙織さん*1のデビュー曲に当たりますが、ゆかりさんのライヴで披露される場合には1989年に森高千里さんによってカバーされたトラックの方に近いアレンジになっています。南さんは1978年に芸能活動から引退されていてオリジナルに触れる機会が少なかったので、森高さんのバージョンの方が楽曲に対する印象の大半を占めているのが正直なところなので、あまり違和感はありませんでしたが。

森高さんによる『17才』のカバーは彼女自身をスターダムに押し上げる大きな要素となったのですが、この楽曲のPV*2でも見せていた脚線美がしばらくの間は彼女の看板の一つとなりながら、以後にリリースする『雨』や『渡良瀬橋』等の楽曲によってシンガーソングライターとしての地位も確立していくことになります。

余談ですがこの2曲、どちらも作曲は筒美京平さんという共通点があるのです。流石のヒットメーカー…

意外と多かった「あのグループ」

今回設定した条件の対象となるライヴの中で最初に歌唱されたカバー曲は2009年2月14日開催の*Dreamy Maple Crown* 福岡公演での『バレンタイン・キッス』なのですが、実はおニャン子クラブ関連の曲は3曲カバーされており、まとめてご紹介しようと思います。

まずは『バレンタイン・キッス』。アーティスト名は「国生さゆり with おニャン子クラブ」の名義で、改めて原曲に当たると所々で複数人で歌っているパートがありましたが、残念ながら歌唱メンバーを聞き分けられるだけの解像度は持ち合わせておらず。

1986年2月のリリースなんですが、TVの情報番組におけるバレンタインデー関連情報のBGMとしてから30年以上に亘って使われ続け、すっかり定着しましたね…

2009年末から2010年初にかけて行われた*Princess a la mode*ツアーでは、日替わり曲としてアニメ主題歌が1曲ずつカバーされており、2010年1月に入ってからの愛知公演では『恋はくえすちょん』が選ばれました。こちらはおニャン子クラブ名義でのシングル曲になります。ライヴでは当時のレーベルスタッフだった石岡さん等のスタッフさんがダンサーとして登場したことが印象的でした。

今ではすっかり「ちびまる子ちゃん」が定着しているフジテレビ系日曜18時枠で1986年10月から一年間放送されたTVアニメ「あんみつ姫」のオープニング曲で、おニャン子クラブ本体としては稀なタイアップ曲*3でした。

もう一曲はおニャン子クラブから最初に誕生した派生ユニット「うしろゆびさされ組」の『象さんのすきゃんてぃ』。同じくフジテレビ系土曜19時半枠のTVアニメ「ハイスクール!奇面組」のオープニング曲でしたが、2015年8月の神楽坂ゆか セカンドコンサートのセットリストに組み込まれた理由は恐らく、ゆかたんのうっかりな癖と曲名の「すきゃんてぃ」との間に関連性を見出したからではないか…と睨んでいますが真相は如何に。

余談ですが、うしろゆびさされ組はその結成の時点で「ハイスクール!奇面組」の主題歌を担当することが目的で、結果的に解散までにリリースされた全シングルA面*4曲は全てこのアニメのオープニング曲として採用されていました。但しユニットの解散時期はアニメの放送が続いていたため、工藤静香さん達3人が選ばれた「うしろ髪ひかれ隊」が結成されて「〜奇面組」の主題歌を引き継ぎ、後番組となった「ついでにとんちんかん」の主題歌も担当することになったのでした。

 

アイドルソング多士済々

ゆかりさんと同じ福岡出身のスーパーアイドル・松田聖子さんの楽曲は今年10月の*Meet Me?* 1日目に『時間の国のアリス』が披露されましたが、これが2009年2月の*Dreamy Maple Crown* 大阪公演で『天使のウィンク』をカバーして以来13年振りの聖子ちゃん曲でした。

1980年デビューの聖子ちゃんは私にとっては最初の「アイドル」で、家にあったドーナツ盤*5やFMラジオから歌を録音したカセットテープで曲に触れてきた世代です。現在に至るまで楽曲リリースが続いている彼女の活動の中で、神田正輝さんとの結婚以前を第1期とするならば、この2曲はその後半にリリースされたもの。作曲が『時間の国のアリス』(1984年)は呉田軽穂こと松任谷由実さん、『天使のウィンク』(1985年)は尾崎亜美さんというのは、個人的に後に多くの歌謡曲を知ることで味わいが増す情報でした。

個人的には仕事の都合で*Dreamy Maple Crown*ツアーに1公演も参加出来なかったので、ゆかりさんの『天使のウィンク』を体験することが出来なかったのが今となっては口惜しいのです。何時かもう一度、そんな機会が来るでしょうか…?

同じく1980年代前半にアイドルとしてデビューした小泉今日子さんのシングル曲『なんてったってアイドル』(1985年)をゆかりさんがカバーしたのは2009年3月の*Dreamy Maple Crown* 千葉公演

アイドル時代のキョンキョンは、同時期に活躍していた聖子ちゃんや(中森)明菜ちゃん等の所謂正統派や、先行してバラエティ番組へ進出した前出の伊代ちゃん等とは楽曲(『艶姿ナミダ娘』や『ヤマトナデシコ七変化』、後年には『見逃してくれよ!』等もありました)や歌番組出演時の衣装などの趣がやや異なっていて、なかなか印象的でした。ちなみにこの『なんてったってアイドル』、歌詞のメタっぽさも作詞が秋元康さんと聞くと何故か納得してしまうんですよね…

そんな1980年代を彩ったアイドルたちが歌から演技へと活躍の場を移しつつあった中、1989年10月の「ザ・ベストテン」終了を境にゴールデンタイムのTV歌番組は減少の一途を辿り、俗に言う「アイドル冬の時代」を迎えることになります。その1989年に、前出のおニャン子クラブの母体となった「夕やけニャンニャン」と同形態の後継番組「パラダイスGOGO!」から第1弾としてデビューした女性5人組アイドルグループ・CoCoのシングル曲『はんぶん不思議』が、2014年8月の神楽坂ゆかファーストコンサートでカバーされました。

この時はゆかたんのコンサート中にゆかりさんからVHSビデオレターが届き、映像のゆかりさんとステージ上のゆかたんが一緒に『はんぶん不思議』を披露するというスタイルで、オリジナルをリアルタイムで追っていた私個人としては「ずっと愛聴していた歌曲が、アイドルコンサートの聖地の一つである中野サンプラザで、ゆかりさんの歌声で」接することが出来たのは大きな感動を覚えたものです…

本曲は1990年リリースのCoCoのセカンドシングルで、1番サビの「♪あなた意地悪」「♪私せつない」というフレーズを彩る特徴的な声色は、ソロパートだった三浦理恵子さんの二つ名「魅惑のキャットボイス」を代表するものとしてインパクトを残すもの。ともすればデビューシングルの『EQUALロマンス』の方がTVアニメ「らんま1/2」のテーマソングであったり、様々なアーティストにカバーされていたりと汎用性はありそうですが、サビの掛け合い感が「離れた場所にいる二人で歌う」という特長を生かすものになりましたし、何よりこんなご意見もありましたから…

翌2015年にも同じ中野サンプラザゆかたんのセカンドコンサートが開催されたのですが、その際に披露されたカバー曲の一つが高橋由美子さんの『アチチッチ -fire version-』(1992年)です。無印のオリジナルバージョンも存在はしますが、彼女の各種ベストアルバムに収録されているのはこちらのバージョンですし、ゆかたんが披露した際もイントロにサイレン音が入っていたので"fire version"だったと認識しています。…寧ろシングルカットされているのもこちらのバージョンという。

記憶に相違がなければ、ご本人が出演されていたカップ麺のTVCMで「その中のTVから流れてくる歌」としては世に出ていましたが、それ以外の露出は特になかったかと…

その高橋由美子さんの楽曲はもう一曲、個人的には意外な場面で意外な曲がカバーされました。2018年2月の*Tricolore Plaisir* 1日目に披露された『Good Love』(1993年)がそれです。

楽曲自体はご本人主演のドラマ「お願いダーリン!」の主題歌で、好セールスを記録したシングルではあるのですが、バースデーライヴ初日のセットリストに突然差し込まれたカバー曲のイントロで曲が何かは分かれど何故?という気持ちに一瞬なりながら、曲の展開は完璧に知っているからしっかり乗るんだ!とペンライトを振った一曲でした。

 

唄え歌謡曲

これまでに私が参加したライヴ中に披露されたカバー曲の中で一番度肝を抜かれた楽曲として挙げるのが、畑中葉子さんの『後から前から』。2015年8月の神楽坂ゆか セカンドコンサートでの出来事でした。ゆかたんのオリジナル曲としても『女豹』や『Jealous』といったものはありましたが、そのゾーンに組み込まれたカバー曲がこの曲とは、ちょっと想像を超えていたな…というのが当時の感想でした。

畑中葉子さんは元々平尾昌晃さんとのデュエット曲『カナダからの手紙』でデビューした後にソロ活動へ移行、1980年の本曲リリース時期と前後してにっかつロマンポルノへの出演があり、以降のシングル曲でも扇情的とも取れる歌詞を伴った楽曲が見られています。

今回取り上げる対象の中では数少ないバラード曲の一つ、『恋におちて -Fall in love-』は2022年のアコースティックツアー*Soundrops*のうち2公演で、風の香りと太陽によってカバーされました。私の参加公演は対象ではなかったのが残念でしたが、映像で残ってくれたのが本当に有難い…

楽曲のリリースは1985年で、同年放送のTVドラマ「金曜日の妻たちへⅢ 恋におちて」の主題歌としてドラマと共に一世を風靡しました。「金妻」と称される「金曜日の妻たちへ」シリーズ3作品はそれぞれ主題歌が違うのですが、イメージの強さから本曲が「金妻」の代名詞的な楽曲として認識している方も多いのではないかと思います。ちなみに本曲の作詞は湯川れい子さん、前出の『センチメンタル・ジャーニー』と同じ方です。

 

寡聞のアニメソングカバー

ゆかりさん自身の楽曲がアニメ作品の主題歌になることは間々ありますが、20世紀アニメソングのカバーとなると結構例が少なく、しかもそのほとんどが前述した*Princess a la mode* ツアーの各公演で日替わり曲として披露されたものでした(愛知公演は前出の「恋はくえすちょん」)。

2010年1月の*Princess a la mode* 神奈川公演での日替わり曲『ラムのラブソング』は1980年代中盤に放映されたTVアニメ「うる星やつら」のOP曲。今年(2022年)10月クールのノイタミナ枠で新作が放映されていますが、当時は同じフジテレビ系でも水曜19時半からの放送でした。私は専らその前枠の『Dr.スランプアラレちゃん』を観ていて『うる星やつら』の方はそれほどでも…だったのですが、楽曲のインパクトは当時から大きく記憶に残っています。

ちなみにこの曲は『センチメンタル・ジャーニー』『17才』と共に複数のイベントで歌唱された3曲のうちの一つですが、もう一回は2018年のゆかりっくFesで、120600mAhにより全く異なるアレンジで披露され王国民の意表を突いたのでした。

少し遡った2009年のクリスマスに行われた*Princess a la mode* 大阪公演でのカバー曲は『キューティーハニー』。前川陽子さんの歌唱による同名アニメの主題歌としてのリリースは1973年で、以降もアニメや実写を問わず派生作品が制作される度に、様々なアーティストによってリメイクやカバーがなされ主題歌となる、当に作品と一心同体の楽曲です。

近年では…と言っても2004年なのですが、倖田來未さんによるカバーがよく知られるところでしょうか。こちらは同時期に制作されたOVAの「Re:キューティーハニー」と、庵野秀明監督による実写版映画の両方で主題歌となっていました。

そう言えばゆかりさんは2018年放送のTVアニメ「Cutie Honey Universe」に出演されていましたが、この作品だけ主題歌が「キューティーハニー」じゃないんですよね…

ゆかりさんの歌手活動の中でも二度しかない年またぎのイベントとなった*Princess a la mode* 福岡公演のセットリストに入ったのは『デリケートに好きして』。1983年に放送が開始され、所謂「魔法少女シリーズ」1作目となった「魔法の天使クリィミーマミ」のオープニング曲で、主人公の声優も担当した太田貴子さんが歌唱しています。

この「魔法少女シリーズ」は1980年代中頃にTVアニメが4作制作されていますが、2作目「魔法の妖精ペルシャ」のオープニング曲『見知らぬ国のトリッパー』、3作目「魔法のスターマジカルエミ」のオープニング曲『不思議色ハピネス』とそれぞれ特徴が異なる良曲があり、その中でも『デリケートに好きして』は太田貴子さんの甘い歌声と、この時代に数多くのアニメソングを手がけた古田喜昭さん作曲のメロディーによって少女向けアニメソングの主題歌然とした雰囲気が色濃く出ていると感じます。

 

風の香りと太陽とJ-POPと

2018年10月に開催されたゆかりっくFes にて彗星の如く現れたフォークデュオ・風の香りと太陽。路上ライヴ出身の彼らはこれまでに三度の登場機会がありCDのリリースもありましたが、オリジナル曲がありません。…となると披露する楽曲は畢竟カバー曲ばかりになるわけで、ここでは出演したイベント毎に見ていくことにしましょう。

2018年のこと

初お目見えとなったゆかりっくFes '18 in Japanでのステージで風の香りと太陽が披露した曲のうち、本稿のテーマに該当するのはスピッツの『チェリー』だけでした。リリースは1996年で、その前年に『ロビンソン』『涙がキラリ☆』とヒット作が続いてきたところに、年明けから放送されたドラマ「白線流し」の主題歌に起用された『空も飛べるはず』がミリオンセラーになった流れを受けてのシングル曲となったものです。

このゆかりっくFesに合わせてリリースされたCDの1曲目がスガシカオさんの『アシンメトリー』カバーであったように、フォークソングとしてカバーするという前提があるからか、男性ヴォーカル曲をカバーすることも多いのが風の香りと太陽の特徴とも言えるのかもしれません。

余談ですが、同じくゆかりっくFesに出演していたユニット"Don’t MOVE"が披露した『Gamble Rumble』は2001年1月リリースだったので、ギリギリ今回の対象には含まれませんでした。ボーダーラインがこの曲なんですね…

2019年のこと

2019年の*Twilight Chandelier*ツアーでは、2Days開催の兵庫公演に事前告知ありのゲストとして出演。物販でTシャツが出たのですが、整理券配布開始30分後の会場到着では入手が叶わず歯噛みした思い出が…

この2Days公演では3曲を披露していて、うち2曲が日替わり曲という構成。1日目MY LITTLE LOVER*6の『ALICE』が選ばれました。こちらもリリースは前出の『チェリー』と同じ1996年。

Mr.Childrenのプロデューサーとして名を上げつつあった小林武史氏によるプロデュースで1995年にデビューした女性ヴォーカルと男性ギタリストのツーピースユニット・MY LITTLE LOVERは、デビューシングル曲の『Man & Woman』からスマッシュヒットを飛ばし、代表曲の一つ『Hello, Again 〜昔からある場所〜』に続く4枚目のシングルが『ALICE』になります。この曲はCMソングとしても採用されたのですが、ヴォーカルのAKKOさん自身もCFに出演されていたのを覚えています。

翌日のセットリストに入っていたのは小沢健二さんの『ラブリー』。本稿の執筆中にセルフリミックス・リマスタリング版のリリースが発表になりましたが、オリジナル版は1994年のリリースです。

私が名前を知ったのは「タモリのSuperボキャブラ天国」のテーマ曲『今夜はブギー・バック (featuring スチャダラパー)』からで、これがフリッパーズ・ギター解散からのソロ転向後3枚目のシングル。この後に『愛し愛されて生きるのさ』、本曲『ラブリー』とシングルリリースを重ねていったのと時を同じくしてCMソング『カローラⅡにのって』が大ブレイク、フルバージョンが作られてシングルリリースされるまでになったのが小沢健二さんにとっての1994年でした。

余談ですが、歌い出しの「♪プラダの靴が欲しいの」という一節がNHKルール*7に引っかかってしまい、紅白歌合戦への出場時には「♪綺麗な靴が〜」としていたのが、この曲に関して個人的に思い出すエピソードだったりします。

 

2022年のこと

コロナ禍を挟んだ2022年、風の香りと太陽は三度我々の前に帰ってきました。今回はゆかりさん初のアコースティックライヴツアー *Soundrops* の前座としての登場です。

その前座パートの2曲目に選ばれたのが、観月ありささんのシングル曲『今年いちばん風の強い午後』です。個人的には観月さんの楽曲の中で一番好きな曲で、ツアーの仙台公演に参加した際にはイントロの半信半疑感から歌い出しで確信に変わった瞬間、思わず天を仰ぎました…

現在は俳優としての知名度が高い彼女ですが、当初はモデルとして芸能界で脚光を浴び始め、1991年に歌手デビューという流れがありました。本曲は1993年5月リリースの5thシングルで、作曲は呉田軽穂こと松任谷由実さん。当時愛飲していた果汁入り炭酸飲料「シャッセ」のCMタイアップ曲となっていましたが、一つ前の同タイアップ曲が小室哲哉さん提供の4thシングル『TOO SHY SHY BOY!』だったので、CMの印象がまるっきり変わってしまったことが印象に残っています。

余談ですが、観月さんのデビュー曲『伝説の少女』は尾崎亜美さん作曲となっていて…おや、「呉田軽穂」に「尾崎亜美」、本稿の前半にもお名前を見かけましたね…

ここまで挙げてきた楽曲は全てシングル表題曲ばかりでしたが、唯一の例外が一部公演*8での披露曲であったB'zの『あいかわらずなボクら』です。1991年リリースのアルバム『IN THE LIFE』の収録曲で、同時収録のシングル曲としては『もう一度キスしたかった』や『ALONE』がある、という時期になります。

原曲の時点で音数が少なくアコースティック向きである上に尺が約100秒というコンパクトさ、見れば見るほどこの曲の特殊性が浮かび上がってきます。恐らくは桃色男爵のバンドマスター・ノリさんにそっくりの太陽さんのセレクトなのではないかと…

 

ちょっとだけ例外

2018年のゆかりっくFesで大トリを務めたゆかりさんのアコースティックパートでは、1日目NOKKOさんの『人魚』が歌われていましたが、俗に'90年代J-POPとカテゴライズされる楽曲をゆかりさんとしてカバーするというのは、今回取り上げる対象の中ではこの例だけでした。

NOKKOさんは『フレンズ』(1985年)や『RASPBELLY DREAM』(1986年)等のヒット曲があったレベッカのヴォーカルだったことから個人的にはロックシンガーのイメージが強かったのですが、ソロ活動開始後の1994年にリリースされた本曲では持ち前の力強い歌声はそのままにバラードを歌い上げていたのは新鮮に耳に残りました。

この曲が本稿の〆なのですが、見えない力が働いたのか、この『人魚』も作曲は筒美京平さんでした。最初と最後が筒美先生の曲でまとまる形になるとは…
筒美先生は一昨年に逝去されましたが、日本のポップミュージック界において大きな存在であったことを本稿を書き上げるにあたっても改めて実感しました。

おわりに

「直近15年間の田村ゆかり関連ライヴで披露されたカバー曲のうち2000年以前にリリースされたもの」という条件を付けてピックアップしてみたところ、合計22曲をご紹介する形となりました。「カバー曲」としては勿論これら以外に2001年以降にリリースされたものもありますから、思ったよりも多くの楽曲をカバーとして披露されているんだな、というのが実感でした。

勿論「田村ゆかりライヴ」ですから、ゆかりさん自身の所謂「持ち歌」を聴いて見て感じて楽しむことが第一にあることは言を待ちませんが、時にはライヴのスパイスとして、「別のアーティストによって世に出されたが、その時点のゆかりさんが表現したい何かに適合する楽曲」も同じように楽しんでいきたいと思っています。そこに自身の思い入れが重なると、自身に対してとんでもない威力を発揮することも知っていますので…

それと、今回の記事では各曲での紹介に合わせてSpotifyへのリンクを埋め込んでみました。一昔前に比べれば、過去のリソースへのアクセス性が向上している面もありますので、原曲にも是非触れてみては如何でしょうか。

手持ちのCDから取り込んでいたライブラリには16曲いました。多い方なのかな…?

 

さて、明日はいよいよ「ゆかりっく Advent Calendar 2022」の最終日。
鶏ネギさんの記事をどうぞお楽しみに。

そして 今夜はめろぅぷりすます2022 の配信は20時からの予定です、お忘れなく。

それでは皆様、素敵なクリスマスを。

*1:写真家・篠山紀信氏夫人

*2:今ではMusic Video = MVと呼びますが、当時はPromotion Video = PVと呼ぶのが専らでした。

*3:おニャン子クラブ自身が出演している番組や映画のテーマソングとしては複数存在しますが、それ以外の番組での利用は本曲とエンディング曲の『あんみつ大作戦』のみ。

*4:当時のシングルはレコード盤の両面に1曲ずつ収録されるのが一般的で、表題曲を再生可能な盤面をA面と呼称していました。

*5:EPレコード

*6:現在は大文字と小文字混合の"My Little Lover"表記が正式グループ名

*7:特定の企業名や商標名を含む歌詞の場合は言い換えが必要になる、というもの。有名な例として山口百恵さんの『プレイバックPart2』で「ポルシェ」がNGとなり、「♪緑の中を走り抜けてく真っ赤なクルマ」と歌唱していました。

*8:仙台・大阪・愛知の各公演